秘密が始まっちゃいました。
「あんまり苛めると、俺泣くぞ」


私の脳裏に、

先週の夜の映像が過る。

夢みたいな光景。

荒神さんの涙。



「失礼します!」


私は彼の指を、手ごとぐしゃっと潰して放り投げると、非常階段を後にした。


胸がまたドキドキしていた。

この前見たあのシーン。

やっぱ信じらんない……。


こんな男が、あんな風に泣くなんて夢に違いない。疲れてたんだ、私。

そうでなければ、人違い。

私はガンガン音をたてて、階段を降りて行った。




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