秘密が始まっちゃいました。
②
「大変だったってね~、総務は~」
その日の夜、神楽坂のタイ料理屋で向かい合ったのは、同期で仕入れグループの真壁瑠璃(まかべるり)だ。
飯田橋に会社があるので、私と瑠璃の定例会は大抵神楽坂か、帰路の途中の新宿になる。
瑠璃は同期の中で一番仲がいい。
ゆるふわカールのミディアムボブ、背が低くて胸がおっきくて、レースやふんわり系の服が大好きな瑠璃。
甘めのルックスは私と正反対だけど、妙に気が合う。大人になってできた親友って感じだ。
「なんで知ってるのよ?福谷からの情報?」
私は眉を寄せて問う。
瑠璃と販売一課の福谷は交際四年、結婚間近だ。
瑠璃はぽってりとした唇を横に引き笑う。
「健ちゃんに聞かなくても、本社中知ってるよ。一販課が勝手に大会議室使って、LED特販がキレて、総務がてんてこ舞いだったって」
はは~、もう有名な事案ですか。