秘密が始まっちゃいました。
「望月が色々サポートしてくれたおかげで、涙克服はできなかったけど、周りにバレはしなかった。ありがとう」


荒神さんが改めて頭を下げる。
私は首を振った。たいしたことじゃない。彼氏ゲットの機会を一回逃したくらいだ。
そのおかげで、こんな素敵な夜をプレゼントしてもらって、悪いくらい。きっと、恋人を連れてくるような、とっておきのコースなんだろう。


「最初に泣いてるとこ見られたのが、望月でよかった」


荒神さんが言った。私は思い出す。オフィスで嗚咽する彼。背を震わせ、本当に悲しそうに泣いていた。
あの時、荒神さんにはどうしようもなく悲しいことがあったのだろう。私にはその理由がわからない。


「私は、バレてたとは思いませんでした。あれから歩き方に気を付けてます」


荒神さんが笑ってから、真摯に私を見つめる。


「正直さ、望月に見られた時は、マズイと思った。おまえが真面目なヤツなのは知ってたけど、やっぱ女子だしさ。噂話にされて、あっという間に社内に広まっちゃうのかなって」


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