秘密が始まっちゃいました。
「ともかく、お役にたててよかったです。あとは、もう少し社内で協力的になってくだされば完璧」


「あれー?それは……努力してるんだけどなぁ」


何にも変わってませんけど。

私はため息をつく。
ま、しょうがないか。そんなに急に変われないし、この人は何をやっても問題児のままだろう。
それなら、その都度私が叱りにいけばいいだけだもん。

もう一緒に出掛けることはなくなるかもしれないけれど、注意する、される関係くらいは残しておいてもいいかもしれない。


「あの……」


私は思いきって口を開く。


「なに?」


荒神さんが私の顔を覗き込む。


「聞いてもいいかわからないんですけど……、最初に私が見ちゃった時、……その、オフィスで泣いてたのは……何かあったんですか?」


荒神さんが私を見ている。私は聞いておきながら、つい視線を伏せてしまう。
視線が眩しいのと、聞きづらいことを聞いてしまった引け目から。
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