秘密が始まっちゃいました。
「本当ですね!?」


迫力のある詰め寄りに、私は何度かうなずく。


「ホントに」


今のところは、ホントに。嘘じゃない。


「わかりました。……実は、私は荒神さんのことを好きなんです」


座り直した羽田さんがあらたまった口調で告白した。

イヤイヤ、あなた。
『実は』もへったくれもないから。
たぶん一販課のメンバーになんて、昨日一日だけでモロバレだと思うよ。


「二年前、新人の時からずっと好きなんです。荒神さんの傍にいたい一心で本社に異動してきました。今は片想いですけど、近いうちに想いを伝えて、お付き合いしたいと思ってます」


おー、すごいぞ、25歳女子。
やる気満々じゃない。
一途な上、結構肉食なのかしら。


「私の父は小さいですけど、チップ形コンデンサの製造会社を経営しています。荒神さんのことはすでに両親に話してます。ゆくゆくは私と結婚して父の会社を継いでいただきたいと思ってるんです。荒神さんみたいなできる男がお婿に入ってくれるならって、両親も期待してるんですよ」


前言撤回。
この子、一途な肉食じゃない。ちょっと電波系だ。
見た目は今風だけど、考えてることがだいぶ激しめ。

フツー、片想いの男との未来を親に語る!?
なに?確定なの?荒神さんと付き合ってゴールインすること。
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