秘密が始まっちゃいました。
「あー、一昨日の見てたのか。腕組んでたのは、羽田にせがまれて仕方なくさぁ」


ふん、そうやってせがまれてエッチもしちゃうんでしょーが。
一度でも寝たら、既成事実。
気付いたら婚約の運びだわよ。

荒神さんが私の機嫌をとろうと顔を覗き込んでくる。


「な、誤解なんだよ。映画も『一度でいいからデートしてください』って頼まれたんだ。俺は今回も、涙を見せず、うまく乗り切ることしか考えてないよ。付き合うとか、羽田と先を考えるとか全然ないから」


言い訳じみた彼の言葉にイラッとして、私はぷいと顔をそむけた。


「それならきちんと断るべきです。彼女は真剣なんですよ」


「わかってる!でも異動して即振ったら、あいつのモチベーションにも関わるだろ?真っ直ぐ過ぎる羽田の心をいきなり一刀両断できないんだよ、上司としては!」


むむ、言われてみれば確かに。
男女の前に、荒神さんは彼女の上司だ。

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