秘密が始まっちゃいました。
「ま、望月だし。おまえらしくて納得」


「私らしくってなんですか」


「真面目で堅実。部屋も質実剛健を絵に書いたようだ」


そう言って、くつくつ笑う荒神さん。私のイメージってそんな感じなのね。

荒神さんの持ってきたビールと買い足したチューハイを冷蔵庫にしまい、私は手早く夕食の準備をした。

気負わず、遠慮されず、でもせっかくだから美味しいものを食べてほしい。そんな理由で選択したメニューが豚のしょうが焼き。

飴色に焦がした玉ねぎとたっぷりの豚ロースを炒め、千切りキャベツの上にのせる。
お味噌汁もお出汁からとった。
本当は副菜をもう一品と思ったんだけど、これ以上は気合い入って見えそうでやめた。

私たちは付き合ってるわけじゃない。
彼氏に見せるような女子力を出しちゃダメだ。


「うまいよ、望月。すごいうまい!」


それでも、私の出した夕食を夢中で頬張る荒神さんの姿には、つい頬が緩む。
< 185 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop