秘密が始まっちゃいました。
彼の部屋のソファで押し倒されたことが甦る。
怖い記憶じゃない。
思い出しただけで、頬が熱くなり、心臓が跳ねる特別な体験だ。


しかし、意識しているのはやっぱり私だけみたい。

夕食後、荒神さんはシャワーを借りると言ってバスルームに消え、私が片付け終わる頃には、Tシャツにスウェット姿で居間に現れた。


「望月も入れば?楽なカッコで見ようぜ」


濡れた髪にタオルを当てながら笑いかけるその無防備な姿。
前髪が顔にかかると子どもっぽく見えるのだと気付いた。首筋をしずくが流れ落ち、鎖骨にぶつかる。私の胸がぎゅっと縮む。

あー、ダメダメ。
イレギュラーばっかり見てると、普段の100倍くらい、荒神さんを男として意識しちゃうよ。

私は食器まで片付けると、言われるままに、シャワーを浴びてしまった。なぜか棚から普段使わないシャワージェルを出して、身体を洗う。
ベリーの良い匂い。荒神さん、気付くかな。

……いや、気付かなくて全っ然いいんだけど。

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