秘密が始まっちゃいました。
そりゃ、荒神さんの涙克服のためだ。
このデートをうまく切り抜けるために前夜対策講座をしていただけた。
あまりうまくいったとは思えない上に、こんな火種にされちゃったけど。

でも、それをありのままは言えない。
これほど怒っている彼女に本当のことを言ったって、きっと想像が付かなくて信じてはもらえないだろう。
何より、真偽は無視で言いふらされたら、荒神さんの立場がない。


今、優先すべきこと。
それは、荒神さんの秘密を守ること。


「……付き合ってるの……」


私は自分でも驚くくらいはっきりと口にした。


「え?」


羽田さんが震える声で問い返す。

ごめん。
私は荒神さんを守るためにあなたに嘘をつく。

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