秘密が始まっちゃいました。
「一応、悪口にはなってませんので。羽田としては『二人が付き合い始めたから諦めた!』としか吹聴してません。でも……、日冴先輩も荒神さんもやりづらいですよね。ホント、うちの同期がスミマセン」


いやー、私としては実際付き合ってないのに、完全な嘘噂が社内全域に広がろうとしていることに戸惑ってます。

どうしよう……これ今更否定して回ることなんかできないよね。羽田さんの手前もあるし、「じゃあなんでそんな嘘を?」って話になっちゃうもんね。


ん?ちょっと待って?
荒神さんの言う『外堀』ってこれ?

もしかして、羽田さんをあんな形で振ったら、社内中に言いふらされるくらいは考えてた?


昨日の意地悪な微笑みが脳裏に浮かぶ。

涙腺ゆるゆる男子のくせに、女を落としにかかると、あんなセクシーで企んだ表情をするんだ。
くっそー、やっぱり巻き込まれた感が半端ない。


「あのね、望月くん。また、ちょっと一販課まで行ってきてくれないかな」


朝礼の後、平野部長が遠慮がちに声をかけてきた。


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