秘密が始まっちゃいました。
「昨日の今日で、気まずいかもしれないんだけど、ひとつ頼むよ」


平野部長の口振りから、この人もすでに私と荒神さん交際報道を知っているのだとわかった。
役職者まで、知ってるなんて。
一体、噂はどこまで広がってるんだろ?





私が頼まれた配布書類を持って、重い足取りで一販課に行くと、早速周囲の好奇の視線を感じた。
考え過ぎじゃない。
結構、あからさまにみんな見てくるんですけど。

一販課の澤田課長に資料を渡す。
ニヤッと澤田課長が笑ったのは、他意はない……よね。



「望月さん、荒神さんなら留守ですよ!」


そんな私によく響く大声をかけてきたのは、当事者のひとり、羽田さつきだった。


「あ、羽田さん、オハヨ。いや、今は澤田課長に用事があって……」


「そうですか!でも、荒神さんと会えないのは残念ですね!じきに戻るとは思いますけど!お待ちになられますか!?」


羽田さんの言葉はトゲトゲ。そして、全部のボリュームが大に設定されているみたい。
いや、彼女的には自然に振る舞おうとしている様子だ。だけど、溢れる敵意を抑えきれないって感じ。
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