秘密が始まっちゃいました。
「こら、羽田さん。望月さんに失礼でしょ」


私と羽田さんの間に入ってきたのは、一販課の営業事務の湯沢さんだ。
羽田さんがむーっとした顔をしつつ、同性の先輩相手に引き下がる。


「すみませんでしたっ。ちょっと御手洗いに行ってきます」


オフィスサンダルではなくヒールを響かせ、羽田さんが一販課を出ていく。それを見届けて、湯沢さんが口を開く。


「ごめんね、彼女もしばらくはカリカリしてると思うけど、気にしないで」


「いえ、私が悪い部分が大きいから……」


「おめでとうね。荒神さんに、望月さんみたいなしっかり者がくっついてくれて、事務方としては助かる。なーんて本音でごめんね」


「イエイエ……やっぱ噂、すごい広まってますね……」


「うん、昨日、羽田さんからラインが来たのもそうだけど、今朝福谷くんと荒神さん本人が大きな声で喋ってたから。付き合うことになったって」


「……え?」


荒神さん本人が?
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