秘密が始まっちゃいました。
あの人、本気で『外堀』埋める気だ。
社内中に広めて、嘘をホントにしちゃう気だ。


「望月~!聞いたよ!おめでと!!」


そこに同期の福谷が駆け寄ってきた。嬉々とした顔だ。


「いや~、瑠璃とも話してたんだよ。あの二人お似合いなのになぁって!無事交際スタートおめでとう!」


「あのさ……福谷、それは……」


「今度、うちの夫婦とそっちのカップルでダブルデートしようぜ!遊園地とか行っちゃう?」


ダメだ、こいつ。話が通じる気がしない。
すると、そこに悪の枢軸・荒神薫がぷらっとオフィスに戻ってきた。


「あー、噂をすれば、彼氏だよ~」


福谷がニヤニヤ言う。うっさい、バカ!
湯沢さんもニコニコ見守る姿勢だ。

荒神さんが私たちの輪に近付いてきた。


「あれ、日冴、来てたんだ」


ちょっ……!みんなの前で名前呼びするなよ!


「用事は済みました。もう、帰ります」


私はなるべく無表情で答える。
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