秘密が始まっちゃいました。
なにこれ。
ちょっとした罰ゲームみたい。
私の困惑も今の気持ちも完全に置き去りだ。

一販課を出ると、すぐに荒神さんが追いかけて出てきた。

そんな目立つ行動するなよ!


「こっち」


逃げる隙を与えず私の手首をつかむと、荒神さんは非常階段に向かってダッシュした。



非常階段にはいつも通り人影がない。
錆びきったフェンス、ビルとビルの間の忘れられた場所。
ここが好きなのは、喫煙習慣の抜けない荒神さんくらいなのかも。


「噂、広まりまくってますよ」


私は恨みがましく言って、荒神さんの手を振り払った。


「羽田なら拡散早いだろうとは思ってたけど、一日かかんなかったな」


「荒神さん本人もおっきい声で話してるじゃないですか!」


私の怒声に、荒神さんは悪びれることもなく答えた。


「だって、俺としては都合がいいもん」

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