秘密が始まっちゃいました。
私はまたしても言葉をなくして、彼を信じられない表情で見つめる。
荒神さんが一歩私に近付く。
見下ろす瞳はすごく優しい。


「今週はマジで忙しくって、夜会えないんだ。土曜日、デートしよう」


私は錯覚しそうになる。
彼の言い様は本当に恋人同士みたいだから。


「荒神さん、私、まだそういう……」


そういう気持ちかわからない。
これが恋なのかどうか、わからない。

そう言おうとしたけれど、荒神さんが被せて言う。


「日冴の気持ちが俺に向いてないのは知ってるって」


違う。

あなたに妙な独占欲を感じるのは本当。
涙も、笑顔も、私だけのものであってほしい。
そう思ってるのは本当。

だけど、相手は荒神さん。
問題児で、自他ともに認めるすんごいイイ男。

恋愛自体が久しぶりで、しかもアラサーに差し掛かった私は、簡単な気持ちでこの恋に踏み切れない。
こんな風に周りばかりがお祭り騒ぎで、私の考える余地を奪っていく。
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