秘密が始まっちゃいました。
「いいじゃん。出掛けるのなんて、別に初めてでもないし。そのくらいアプローチの機会くれよ」


荒神さんが軽く言う。
そりゃ、出掛けるくらいは問題ないけど。

こんな中途半端な気持ちでいいの?


私が困った顔をしていると、荒神さんが私にまた近付いた。
ドア横の壁に追い詰められる。

こ……これは壁ドンの予感。
防御機能発動!!

私は両手を伸ばして彼の胸を遠ざけた。
しかし、荒神さんが本気になれば、私ごときの力は意味をなさない。
あっという間に両手を胸からはずされ、私たちの身体の距離はゼロになった。


「荒神さん……、苦しいです。……離してください」


抱き締められた格好で、私は抗議する。
本当に苦しい。
動悸もひどいし、切ないくらい胸が痛い。


「そう言うなら、離すけど……」


荒神さんが顔をぐっと近づけた。


「キスはいいだろ。たぶん苦しくないから」

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