秘密が始まっちゃいました。
「じゃ、期待を込めて、眺めんのやめよっと」


「ちょ……待って……。あーもう、いいですよ!最高に美味しい肉じゃがを作ってみせますから!」


私は啖呵を切って調理を再開する。
この一連のやりとりが、今までと同じ空気感なのが嬉しかった。
正直、彼の告白から一週間、どう接すればいいか悩んでいたから。


「今までの彼女ってあんまり料理作ってくれる子いなかったんだよな」


私の心中の疑問に、荒神さんが答えた。偶然だけど、暇つぶしのトークテーマのひとつらしい。


「そもそもお互いの家に行き来するデートをあんまりしてない」


「じゃあ、どこでデートしてたんですか?」


「え?外?メシ食ったり、ホテルに泊まったり?」


それは、お金かかりそうだ。しかし、彼の女子の扱いが洗練されているのは、そうした理由からかもしれない。高級ホテルディナーも東京湾クルーズも、手配や立ち居振る舞いは完璧だった。


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