秘密が始まっちゃいました。
「家イコール油断って感じだったんだよ。前にも話したけど、うっかりテレビで泣ける話とか感動モノやってたら、まずいだろ?だから家にあがるようなデートはあんまりしてない」


荒神さんが言い訳するみたいに言うので、私は何度か頷いて見せた。
私を簡単に家にあげてくれたのは、彼が油断してもいい相手と認定したから。
やはり自分の立場が特別なものなのだと自覚する。

ごはんは炊け、お味噌汁はお味噌を溶くだけ。肉じゃがもあと少し。


「どう?」


荒神さんが私の肩越しにお鍋を覗いた。
お昼も中途半端だったし、もうお腹が減っているのかもしれない。


「あと10分ほど、弱火の落し蓋で煮込めば完成です」


「ふーん」


荒神さんの声音が変化した。

妙な予感に振り向きかけた私は、荒神さんの両腕が伸びてくるのを視界に捉えた。
彼の両腕が私の腰に回される。
そしてそのまま抱き締められた。


「荒神さん!」


私は非難するように叫んだ。
でも、彼は気にする様子もないどころか、私の髪に顔を埋め言った。
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