秘密が始まっちゃいました。
「腹減っちゃった。日冴を味見していい?」


味見!?

私の頭はいっぺんにパニックになる。
それってば、ソレな意味だよね!?

荒神さんが私の顎を捉え、上向かせる。キスの角度で近付いてくる彼の端正な顔。
私は唇が触れ合う前に早口で言う。


「変なことはしないって!言ったじゃないですか!?」


間近で荒神さんが笑った。例の企んだ悪い男の表情だ。


「キスって変なことに入るの?」


言い終わるかどうかで荒神さんが私に口づけてきた。
上向かされ、口を開いて抗議していた私は、図らずもキスの態勢ばっちりだった。
口腔に滑り込んでくる舌が巧みに動き回る。
冗談抜きで身体の芯が疼いてくるのを感じた。甘い甘い刺激。脳の奥がクラクラする。

非常階段でしたキスは、終わりがくることがわかっていた。社内での束の間の逢瀬だったから。
でも、今は荒神さんの部屋。
このままじゃ、流れでいくところまでいってしまう。

すると、濡れた音をたてて、荒神さんの唇が離れた。
え?
目を開けると、その時には荒神さんが私の身体を抱え上げていた。
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