秘密が始まっちゃいました。
だけど、どうしてもまだ心がついていかない。
このまま、彼のものにはなれない。


私が悪い。
私が彼に油断を見せた。

そして勝手に彼を知った気になっていた。

荒神さんにこんなことを言って、納得してもらえるはずもない……。



私の身体からぐにゃりと力が抜けたことは、すぐに荒神さんも気付いたようだ。


「日冴?」


荒神さんが愛撫の手を止め、私の顔を覗き込んでくる。
私は何とも言えない表情をしていた。
後悔とも、悲しみとも、自嘲ともとれる顔をしていた。


「荒神さん、ごめんなさい。私、このまま荒神さんとそういう関係になれない」


小さな声で、私は伝えた。
彼に惹かれている。だけど、戸惑っている。
私が心を揺らしていたのは誰?今、私を抱こうとしているのは誰?

荒神さんが私との身体に距離を作った。密着をといて、私の両肩に触れる。


「そんな顔されたら、続きできないな」


失望と寂しさの滲む声音に、胸がきゅうっと痛くなる。
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