秘密が始まっちゃいました。
「ごめんなさい」


「日冴にとって、俺はやっぱり無し?ただの泣き虫同僚にしか見れない?」


私は首を横に振った。
そんなことない。

でも、心が追いついてこない。
少なくとも、こんな違和感を感じたまま、抱かれてしまうわけにはいかない。


「少しでいいです……時間を……時間をください!」


私は言うなり、逃げるように彼の膝から降りた。

床に置いてあったバッグを取ると、玄関にダッシュする。
ソファに荒神さんをひとり置き去りにして、逃げ出したのだ。

……いや、正確には逃走しかけて、玄関でブレーキ。一度戻ってきた。
キッチンに引き返したのは、頭に肉じゃがの火を消してないという事が残っていたから。

バカみたいに真面目な私は、呆気にとられる荒神さんの前で、きちんとガスの元栓まで締めてから逃走した。
パンプスひっかけ、玄関から飛び出す。

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