秘密が始まっちゃいました。
その恋、大丈夫?
①
「つまりは、押されまくってヒヨったと……。そーいうわけですか」
目の前の瑠璃は、巨大なナンを引きちぎり、マトンカレーの中にぼちゃりと浸した。
私はうなだれ気味に答える。
「まあ……微妙に違う気もするんだけど……有り体に言えばそういうことかも」
「日冴らしいっちゃー、らしいけど、荒神さんカワイソー」
瑠璃の非難に、なお背を丸める私。
逃走デートより二日。
月曜の夜、私は瑠璃と池袋のインドカレー店で定例会を開いていた。
万が一にも荒神さんに遭遇しないように、瑠璃と福谷の新居近くの池袋にしたのは、瑠璃にすべてを話す覚悟を決めたからだ。
「はー、しかし信じらんない。想像もつかない。あの荒神さんが、それほどに涙もろいとは……」
瑠璃はナンを次々にカレーに突っ込み、口に入れていく。
すごいスピードだ。
私は手付かずのチキンマッカーニカレーを見つめる。
普段は大好きなこのカレー。今日はイマイチ食欲が湧かない。