秘密が始まっちゃいました。
「荒神さんが泣いてるところは抱き締めてあげたくなっちゃうと」


「うん」


「日冴は母性愛強そうだもんね」


瑠璃が教師の進路相談のように、質問をしていく。カレーは着々と食べ進めながら。

瑠璃の指摘に私は頭を抱えたくなる。
うーん、やっぱ母性なの?
この気持ちって。


「で、強引に迫られたら好きかわからなくなったと」


「……うん、そう。なんか、色々画策してくるし。私の知ってる荒神さんがいなくなっちゃったみたいで。涙も、あの晩以来見てないし……」


あの晩とは、羽田さんと荒神さんのデート前夜合宿だ。
私はため息をつき、少しだけナンをちぎる。
瑠璃がラッシーをゴクゴクと飲んでから、口を開いた。


「私は強引で押せ押せな荒神さんの方がしっくりくるなぁ。彼ってもともとそういうキャラでしょ?」


「そうかもしれない。でも、強引なのも適当なのも、悪気ないタイプだと思ってたの。マイペースな人なんだって。それが、腹の中であんなに企んでいたとは……」
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