秘密が始まっちゃいました。
私は社内メール便の整理を始めながら、だいぶ肩の荷が降りた気分だった。
彼女へは嘘をついてしまった罪悪感があったから。

新しい恋が成就するかは別として、私が荒神さんと付き合うことで、彼女が悲しみ続ける理由はなくなったわけだもん。

……裏を返せば、それを理由に荒神さんとの交際を拒否するってズルい手は使えなくなる。

はぁ、私、荒神さんとどうなりたいんだろ。
あれだけ一緒に過ごしていたのに、今じゃよくわからない。
しかも、ゆうべから妙な疑惑まで……。


「日冴」


私は思わぬ声に振り向いた。

なんと!

なんと、私のデスクの横に当の荒神さんが立っていたのだ。
総務部がざわつく。
すっかり有名な交際報道から一週間。私と荒神さんのツーショットは、総務部では初だ。


「な……んですか?どうしたんですか?」


「フツーに提出レポートを一販課の分、まとめて持ってきただけですけどー?」


荒神さんはあくまでいつもの事といった雰囲気。

< 264 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop