秘密が始まっちゃいました。
何を仰る、荒神薫。

あなたが自分からレポートを出すなんて、あり得ない。
しかも、一販課の他のメンバーの分も取りまとめて持ってくるなんて、もっともっとあり得ない!


私は心中、全否定しながら、レポートを受けとる。

そのわずかな一瞬、荒神さんがささやいた。私にしか聞こえない声で。


「どのくらい時間あげればイイ?」


私は見る間に戸惑った表情をしてしまう。でも、これ以上総務部のオフィスで彼とこんな会話できない。
みんな、私たちを注目してるもん。


「ちょっと、オフィスの外で」


私は彼の背を押すように外に出る。
周囲からは仲睦まじいカップルに見えたかもしれない。

他の部署なら問題になっても、総務の平野部長は優しいので、私たちが並んでオフィスの外に出てもニコニコしているだけだった。


「わざわざ総務に来なくてもいいじゃないですか」


私は総務部の前で辺りを見渡し、誰もいないことを確認してから声を出した。

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