秘密が始まっちゃいました。
荒神さんのこと、好きなのかもしれない。

それは、感じる。

涙する彼も、強引で獣な彼も、ひとりの人間だ。
ただでさえギャップのある人なんだし、どちらの彼も愛するのが当然なんだろうけど。

私はまだその違和感に戸惑っている。

かれこれ二週間以上彼の涙を見ていないせいもある。


瑠璃に言われた妄想は、何度もフラッシュバックした。


『実はぜーんぶ、荒神さんのお芝居でしたって話』
『涙もろい頼りない男を計算して演じてたんじゃない?』


そんなことあるはずない。そう思いながら、彼を信じられない自分がいる。

もし、すべてが嘘だったら。
ここ数ヶ月振り回されてきた私にとって、そんな茶番はない。
それが私への好意ゆえだって、許せる自信がない。

そこまで、自分勝手で、大嘘つきな人と恋をする自信はない。
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