秘密が始まっちゃいました。
②
17:45の定時。
私は女子更衣室で私服に着替えてくると、自分のデスクで残務を整理しながら、荒神さんを待った。
「望月ちゃん、大変だね」
総務部人事課の先輩・芳野(よしの)さんが声をかけてくる。
35歳・人妻なおねーさま社員。
「芳野さん、代わってくださいよ」
私はぶーたれて彼女を見上げる。
芳野さんが手を口に当て、ふふふと笑う。
「ダメダメ、あんなフェロモンの塊と人妻が定時アフターを過ごしちゃマズイっての」
フェロモンの塊。
荒神さーん、あんたホントいろんな二つ名あるよねー。
「望月ちゃんも最近は彼氏ナシ、デートもしてないんだし。今日は割り切って楽しんでおいでよ」
「荒神さんじゃなきゃ、楽しみますよ。私、あの人と色々ありすぎ」
「そんな二人だからいいんじゃない。気の置けない関係の男女が、今日はお酒の力も借りて、一線踏み越えちゃうかもよ~」
ハイ、無いです。そんなミラクル。