秘密が始まっちゃいました。
「さっきから聞いてれば、おまえ、ホント俺の気持ち信じてないな?」


荒神さんがイケメンフェイスを歪め、苛々と一歩踏み出した。私の方に回り込んでこようとしているのだ。


「よし、全力でわからせてやる!」


私はその言葉に脅威を感じ、ささっと反対方向に逃げた。
すぐに荒神さんがそちらに回り込もうと戻る。
私はまたしても反対側に逃げる。


「逃げるなっ!」


「いやです!捕まったら、何されるかわかんないですもん!」


「イイ覚悟だな、おまえ。……ご要望にお応えしちゃうぞ」


長机を挟んで、逃げる私と追う荒神さん。

コントみたいな状態だけど、私も彼も真剣だ。
どうやったって、出口は彼の側なので、私は彼に捕まらないようにこの小会議室を脱出しなければならない。
捕まったら、今度こそ貞操の危機だ。しかも、会社内で!
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