秘密が始まっちゃいました。
この涙は誰がために
①
「顔はマル」
私は自宅の床に転がり、台紙付きの写真を眺めていた。
「31歳、丸菱商事勤務。身長173センチ。趣味はゴルフと読書。……スペック、マル」
好子おばちゃんのメモには『真面目な好青年!』とあり、ご丁寧に赤のラインが引いてある。
お見合い写真に映るスーツ姿の男性は、パリッとした印象の人だ。お見合いなんて必要ないんじゃない?ってくらい。
顔は中の上。
もともと面食いじゃない私には充分過ぎるお顔立ち。身長だって私より10センチ高ければ文句なし。
私には理想的な旦那様なんじゃないの?
私は身体を起こし、写真をベッドに放り投げた。
はぁーっ。
深いため息が出てしまう。
困った……。お見合いを明後日に控え、私の頭の中は荒神さんでいっぱいだった。