秘密が始まっちゃいました。




土曜日の朝、私は電車とタクシーで桜山荘ホテルにやってきた。
大きな庭園を要するこのホテルは結婚式やお見合いのスポットとして超有名。よくドラマのロケなんかで使われるところだ。


「日冴ちゃん!こっちよぉ!久しぶり!!」


ホテルのロビーで待っていた好子おばちゃんは、私を見つけると大仰な身振りで手を振った。ピンクベージュの目立つスーツで小柄なぽっちゃり体型を包んでいる。
私は彼女の大声を気にして、急いで駆け寄る。


「好子おばちゃん、今日はありがとうございます。よろしくお願いします」


私は型どおり頭を下げた。
マシなのは挨拶だけ。
全く心の整理がつかないまま、お見合いにきてしまった。

私の固い表情を緊張ととったのか、おばちゃんはバシバシと私の背中を叩く。


「大丈夫よぉ!今日は私に任せておいてね!」

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