秘密が始まっちゃいました。
「あらためて……ご挨拶にお邪魔します……はい……本当に」


男泣きと形容したらいいだろうか。
涙ぐむ程度の泣き方じゃない。
彼はボロボロ泣いている。

たったひとりのオフィスで、携帯で誰かと話しながら。

しゃくり上げるのを我慢するから、声は押し殺していて、低く掠れそうだった。
その様子がひどく切ない。


通話を終えた荒神さんは、携帯を書類の束に放ると、どんっと両手をデスクに着いた。

そして、嗚咽した。

誰はばかることなく、肩を震わせ、苦しそうに涙をこぼす。

私は息を呑む。

衝撃だった。
普段の彼を知っているだけに。
あまりに違うこの状況は、ショック以外の何物でもない。



だけど、その姿は純粋で綺麗で……




……驚くほどセクシーだった。


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