秘密が始まっちゃいました。
ちらんと荒神さんを見ると、まあ本日もイケメンですこと。

クールビズとはいえ、業種的にスーツが必須の営業マン。
暗めのブルーのボタンダウンシャツに夏用のダークスラックス。
うーん、一応社内基準は満たしているけど、彼が着ると雑誌のメンズモデルみたいだわ。


「いつ、デートに誘われてもいいようにしとくもんじゃないの?女子としては」


ニヤッと笑う荒神さんを私は睨む。


「余計なお世話は結構ですよ。デートではないので、これで十分です!」


「ハイハイ、つまんないねぇ」


早稲田通りを飯田橋駅方面に歩きながら、私は言う。


「荒神さん、二人でお店を探しに行くなんて時間の無駄じゃありません?私が適当に決めておきますよ」


幹事に任命されたとはいえ、極力一緒に行動したくない。

荒神さんがイケメンで眩しいのが理由ではない。
日頃の付き合い方もそうだけど、あの晩、彼の涙を覗き見してしまったことが私の頭に引っかかっている。
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