秘密が始まっちゃいました。
「抱かれたい男って称号も日冴がいるからもういらない。俺は日冴だけの男だもん。な、だからさ……」


横を見ると、泣き腫らした目で、唇を尖らせ両手を広げ、『抱っこ待ち』の荒神さんがいた。
まったく……この人は。

私は彼の頭を引き寄せ、胸にぎゅうっと包んだ。
温かな幸福が溢れてくる。
ずっとこうしていたい、密やかな幸せが私の全身をひたひたに満たす。


「なぁ、日冴にとって俺は抱かれたい男?」


荒神さんが甘い声で言う。
映画はすでにエンドロールも終わって、CMだ。
彼が待ちきれないように、私の鎖骨にキスをする。
どうやらすっかりそういう気分らしい。


私はふふと笑い、答えた。



「まぁ、そういうことにしておいてもいいです」


「なんだよ、含みのある言い方だな」


顔を上げて、文句を言う荒神さんを、あらためて好きだと思う。
私は両頬を包んで、彼の唇に口づけだ。
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