秘密が始まっちゃいました。
心が通じなさそうな女とセックスなんてぞっとする。
それに、一度でも寝たら絶対にチェックメイトだ。積みってやつだ。
羽田は角の彼女におさまってしまうだろう。


「ハハ……、大変だろうけど頑張れよ」


福谷は頼りにならないエールを呟き、去っていってしまった。
角は大きくため息をつき、LED特販部のオフィスに向かって歩き出した。


*****


その日の夜、角はひとり誰も使わない非常階段を使って一階に降りていた。

帰り道に非常階段を使うのは最近の習慣だ。
羽田さつきに会わないために始めたのだけれど、今日のように仕事で退勤が22時を超える日は普通にエレベーターで帰ってもよかったかもしれない。
一販課の事務、羽田さつきはさすがにこの時間は帰っているだろう。

しかし、角は非常階段の入り口ゲートを押し開け、そこに彼女の姿を見つけた。
嘘だろ。思わず呟く。


「角さん!お疲れ様です!偶然ですね!」
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