秘密が始まっちゃいました。
勢いで出た反論に、羽田の表情が真顔に戻る。
良い機会かもしれない。
告白されたんだから、きっちり断ろう。この1ヶ月思い続けていたモヤモヤを断る理由にすればいい。


「羽田は、荒神さんがダメだったから、独身で次点の俺に寄ってきてるだけだろ?俺が断れば、ランキング5位の三島にアタックするんだろ?」


抱かれたい男ランキング5位の三島は、総務部二年目の男子だ。羽田さつきのひとつ下にあたる。
どうせ、彼女は『抱かれたい男』を順繰りに当たってみようと思っているに違いない。
そんな女はお断りだ。


「角さんは、『替わり』で人を好きになれるんですか?」


「え……?」


羽田が至極冷静な声音で問うてきた。
角はその雰囲気にたじろぐ。
てっきり、慌てるのは図星をさされた彼女の方だと思っていたのに。


「私は『替わり』で誰かを好きになることはできません。確かに少し前まで、私は荒神さんに恋していました。望月さんとお付き合いしてるって聞いてからも中々吹っ切れなかったのも事実です。そんな時に、角さんが私を助けてくれました」


「助けたって、俺が?」
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