秘密が始まっちゃいました。
「そいつ、ひどいこと言うな」


「いえ。でも角さんが私に引いてるのも、なんとなくわかるんですよ」


角は色んな意味でうつむいた。
結構、本気で避けていたのに彼女は「なんとなく」しか角の嫌悪に気付かなかったらしい。
しかし、そんなひどいことを女子に言える男と一緒くたにされるのは心外な気もする。

羽田が自嘲気味に言う。


「私、たぶんホントにちょっと変な女なんです。迷惑かけるタイプっていうか。実は今までもずっとこの性格で失敗してきて、男性とお付き合いしたこともないんです」


え?ってことは処女?
そんなに男ウケしそうな顔とスタイルしておいて?

角は思わず下世話なことを考えた自分を呪った。
これじゃ福谷の軽い発言を責められない。


「角さんにもご迷惑かけてるのかなとは思ってます。でも……、私、この性格で25年生きてきて、一生懸命やる以外、方法を知らないから……。角さんを好きになったからには全力でアプローチしたいと思ってます。ご迷惑でしたら言ってください!」


そう言ってぶんと頭を下げた彼女。

身体を前傾させたら、肩にかけていたクロエのバッグの上蓋が開いた。
ばらばらっと財布や携帯が地面に転がる。メイク用品入りのポーチも落ち、中身が散乱した。
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