秘密が始まっちゃいました。
「んむーっ……」


望月が迷惑そうな声を上げた。
とうとう起きただろうか。もし起きたとしたら、この状況を誤解なく説明しなければならない。
ただの親切心だ。夜這いではない。
下心ゼロとは言えないとしても。

その時、望月の腕がにゅっと伸びてきた。

荒神の頭を抱えるように伸びたその手に引っ張られ、望月の真横に沈む。
ベッドは望月の匂いがする。
昨夜も一度、飛び込んでみたけれど、状況が違いすぎる。
今は異常事態だ。
目の前に、依然眠り続ける望月日冴がいて、自分はその間近に横たわっているのだから。

鼻と鼻の距離、およそ10センチ。

これは……弁解の余地がない状況になってしまった。


「望月、寝てんのか?」


荒神は一応声をかけてみる。
もしかして、昨日のカップルごっこの仕返しとか?
いや、真面目が服を着て歩いているような望月に限ってありえない。

望月はすやすや寝息を立てている。
その右手はまだ荒神の左耳あたりに触れていた。
指先の感触。
望月日冴の温度。
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