秘密が始まっちゃいました。
まずい。
こんな近距離で好きな女にくっついていたらまずい。

頭ではそう思う。
しかし、望月から香る甘やかな香りに吸い寄せられそうになる。

ああ、このまま彼女にキスをしたい。
抱き締めて、身体中にキスをしてしまいたい。
彼女はどんな声をあげるんだろう。

それがとにかく知りたい。

荒神の左手が伸びた。
その手が明確な意思を持って、望月の腰に添えられる。
細い身体を引き寄せてしまいたい。
それから、それから……。


湧き起こる衝動を、荒神はぐっとこらえた。


意を決して、身体を起こす。
ずるりと転がるようにベッドから降りた。
床に座り込み、荒神は息を整えた。

……危なかった。
本当に危なかった。

心臓は早鐘を打っているし、変な汗をかいてしまった。
情けないことに、身体の一部は勝手に期待してしまっている。


「ふ……風呂行こう」


ヨロヨロと立ち上がったのは、このままここにいては平静に戻れない気がしたからだ。
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