秘密が始まっちゃいました。
番外編3 キスアンドクライ
電車はがたごとといつもの音をたてて走っていた。
振動に合わせて私たちの繋いだ手も揺れる。
私は荒神薫の顔を見上げた。
彼も私を見ていた。
赤い目と嬉しそうな微笑みに、私の頬もふっと緩む。
番外編3
【キスアンドクライ】
お見合い脱出なる荒業をやってのけ、荒神さんに告白した私は、あの後すぐに好子おばちゃんに謝りに行った。
メイクルームで待っていたおばちゃんに頭を下げると、明らかに不機嫌な彼女は言った。
「いいわよぅ。日冴ちゃんにも驚かされたけど、あっちの方が問題。先方は結局姿も見せなかったんだから!!」
なんと驚くべき事態発生。
おばちゃん曰く、私のお見合い相手の大企業エリートは携帯も繋がらないまま、結局お見合いをバックレたらしい。
おいおいおい。
私より、上手がいたよ。
面白くないのはおばちゃんで、自分のセッティングした会がことごとくうまく運ばず、髪の毛が逆立ちそうな様子だった。