秘密が始まっちゃいました。
「本社で一緒になって2年だけど、二人で飲むなんて初だな」


荒神さんが日本酒のお猪口を唇につけながら言う。
少し厚くて引き締まった唇が日本酒で濡れて、何とも艶っぽい。

荒神さんは困った男だけど、どう公平に見てもイケメンだ。
ワイルドで、整った濃い顔立ち。スタイル抜群。
ま、心は揺れませんけど。


「そうですね。会社以外で二人きりってすごい違和感です」


「そうか?俺、割と自然。望月、気ぃ使わなくていい雰囲気があるからなぁ」


あんたが気を使う相手なんかいるんかい。

瑠璃が言っていた彼の手の件を思い出す。
ちらっとお猪口を持つその手を見る。
確かに、手の甲の感じや、長い指は素敵かもしれない。
でも、エロいかっていうと……、瑠璃の妄想過多な気もしてくる。


「望月さぁ……」


荒神さんが、何かを言いかけた。
私が彼の顔を見ると、日本酒の波紋を見つめる荒神さんの横顔。

あの時の横顔が過る。
泣いていた荒神さん。そのセクシーで綺麗な姿。
そうだよ、手なんかより、そっち。
そっちが頭から離れない。
< 38 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop