秘密が始まっちゃいました。
音をたてたつもりはなかった。
しかし、何かの気配を察してか、荒神さんがバッと振り向いた。
いち早くドアの後ろに隠れた私は、そのまま急いで第一販売課のオフィスから立ち去る。
大丈夫、見られなかった自信はある。
エレベーターではなく、いつもどおり階段で一階の総務部まで降りた。
その間も、心臓はずっと大きな音で鳴っている。
ドッドッドッと激しく跳ねている。
荒神さんが泣いていた。
あの
荒神薫(こうがみかおる)が。
たったひとりで泣いていた。
信じられなくて、胸が疼いて、
私はひとり、呆然と帰路につく。
「夢かな」
そんなひとり言が、駅前の喧騒に消えた。
しかし、何かの気配を察してか、荒神さんがバッと振り向いた。
いち早くドアの後ろに隠れた私は、そのまま急いで第一販売課のオフィスから立ち去る。
大丈夫、見られなかった自信はある。
エレベーターではなく、いつもどおり階段で一階の総務部まで降りた。
その間も、心臓はずっと大きな音で鳴っている。
ドッドッドッと激しく跳ねている。
荒神さんが泣いていた。
あの
荒神薫(こうがみかおる)が。
たったひとりで泣いていた。
信じられなくて、胸が疼いて、
私はひとり、呆然と帰路につく。
「夢かな」
そんなひとり言が、駅前の喧騒に消えた。