秘密が始まっちゃいました。
抱かれたい男っていうけどさ
①
「望月くん、ちょっと言ってきてくれない?」
気の弱そうな口調で私に依頼するのは、平野(ひらの)総務部長。
「また私ですかぁ?」
私はオフィスチェアに背を預け、うんざりと問い返した。
OLも6年やってると幅が利くようになってくる。
部長相手だって軽く文句が出る。
「きみが行くのが一番波風が立たないと思うんだ」
「がつんと波風立てましょうよ。むしろ、私が行ったら暴風波浪警報ですけど」
「まあまあ、そう言わず、ひとつ頼むよ」
部長なのに、部下に頭を下げる平野さん。
その弱気が営業部隊をのさばらせる原因だと思うんだけどな~。
でも、頭を下げられちゃ仕方ない。私は立ち上がる。
「ラジャ。第一販売課に殴り込んできます」
びしっと敬礼をすると、平野部長は慌てた。
「くれぐれも穏便にね」