秘密が始まっちゃいました。
寂しげに言う荒神さん。いつもの自信満々な表情は鳴りを潜め、まだ赤い目も鼻も痛々しい。
私は慰めようと軽い口調で言ってみる。


「ご家族の前でくらいいいじゃないですか、泣いたって」


「バカか、望月。涙ぐむどころじゃなく、おんおん号泣してたら、いっくら身内でもドン引きだろうが!俺だってわかってるんだよ、自分の涙腺が異常に弱いのは!」


バカとはなんだ、バカとは。

なんだか、くだらなーい強がりに聞こえるんですけどー。
あー、庇って逃げたりして、そっちの方がバカだったかなぁ。

でも、彼の涙は綺麗。
泣く姿はさっきの一瞬でもやっぱりドキッとさせられた。
驚いたという意味だけではなく、心を揺さぶられたというか。
普通、他人が泣く姿なんか見たいもんじゃないけど……、荒神さんはちょっと特別かも。


……とそこまで考えて、私はふと引っかかる。

ん?
結婚式?


「荒神さん!」
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