秘密が始まっちゃいました。
私はまだドキドキしている心臓をおさえて、彼の顔を窺う。


「福谷の結婚式まであと1ヶ月。スピーチはもちろん、俺だって席について挙式も披露宴も、参加してやりたい。
長年、この涙もろさで苦労してきたが、ここらで涙を克服する良い機会になるんじゃないかと思うんだ」


「待ってください、荒神さん。全然、話が見えないんですけど」


「焦るなよ。望月に頼みたいのはここから先。
涙克服のため、俺はこれから切ない映画を観まくろうと思っている。おまえにはそれに付き合ってほしいんだ」


切ない映画?
なに、その作戦。

呆気にとられる私と、真剣な様子の荒神さん。


「それは……効果あるんですか?」



「今まで、徹底的に避けてきたからな。涙が出るやつは。要は免疫がないんだ。何度も飽きるほど、悲しいシーンを観れば、ちょっとはマシになると思うんだよ」
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