秘密が始まっちゃいました。
私は暫時考える。

ディナーか、それはオイシイ話だ。
ちょっと映画に付き合うだけで、1ヶ月後に高級ホテルディナー。
悪くない。

何より、これって荒神さんに対する大きな貸しだよね。
マイペースでルール無視男の荒神さん。
今現在、謂わば彼の秘密を私が握ってるってことだもん。
本人が絶対バレたくなく、必死に克服しようとしてる秘密を。

この上、恩を売っておけば、彼も私を尊重してオリコウサンになってくれるかも。

それに、もし私以外がこの役をやるとしたら、それはちょっと嫌だ。
彼の泣く姿。そりゃ、キャラ崩壊ではあるけれど、本当に綺麗なんだ。

男の人が涙する姿自体珍しいけれど、こんなに心を揺さぶられるとは……。


「わかりました。お付き合いしますよ」


私は頷いた。渋々ではない。
私にも割とメリットのある取引だもん。

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