秘密が始まっちゃいました。
エンドロールが終わり、館内が明るくなる。
私はうつむく彼を覆って、わざと立ち上がり、まるで人でも探しているかのように辺りを見回した。
カバーしなきゃ、カバー!

観客がすべてはけたら、隣のスクリーンに移動しなければならない。
15分後にはレイトショーが始まる。


「荒神さん、大丈夫ですか?」


私は「もう移動できますか?」の意味で問いかける。

荒神さんはうつむいて、ぽろんぽろん涙をこぼしながら答えた。


「……なんでマルティーナは死んじゃったんだ……。あんなの悲しすぎるだろ」


おーい、そうじゃないですよー。
映画の感想じゃなくて、席を立てますかって意味ですよー。

私はやむなく、荒神さんに手を差し出す。
彼の手を引いて、ささっと移動してしまおうと考えたのだ。
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