秘密が始まっちゃいました。
すると、荒神さんは素直に私の右手に自らの右手を重ねた。そして、私を見上げる。

その顔ときたら!
涙に濡れた頬も潤んだ瞳も、普通の男の人ならぎょっとするものだ。
でも、彼ほど端正な顔でやられると、映画のワンシーンみたい。

ちょっと……、今の映画の百倍くらい感動するわ、こりゃ。


「望月、あと1分待ってくれ。とりあえず、涙止める」


「止めるって……、コントロールできるんですか?」


「できない。努力するだけだ」


そう言って唇をきゅっと噛む荒神さん。
あーもう、いちいち可愛いんだか、カッコいいんだか……。


私は荒神さんの手を握り、彼を待つため横に座り直した。

その後にレイトショーでもう一本映画を見たけれど、荒神さんが泣きまくりだったのは、言うまでもないことだ。


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