秘密が始まっちゃいました。
同じ週の金曜日、私と荒神さんは再び新宿に映画観賞に来ていた。

今日は、すでに一本見た後で、荒神さんは赤い目をしている。
私がプレゼントした伊達メガネでそれをごまかしている状況だ。

上映館が変わるのと、時間が空くため、私たちはラーメンを食べていた。
今日も荒神さんがおごると言うので、さすがに悪くて、安価なラーメンを指定したんだけど……。
もう夜九時。あー、脂肪になるな、このラーメンのすべては。


この週ですでに3本の映画を見ている。

そのすべてに荒神さんは涙していた。
結構ベタなストーリーでも、人間ドラマでも、戦争モノでも、びっくりするくらいよく泣く。


ま、私としては彼の泣き顔は嫌じゃない。むしろ、妙な感動を覚えてしまう。
だから、何度見ても問題ないんだけど。


……作戦としては問題あるんじゃなかろうか。
ホントにこれで涙を克服できるの?


「このままじゃ埒があかないな」


先に食べ終えた荒神さんがふと言った。
私はちゅるんと麺をすすってから横を見る。
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