秘密が始まっちゃいました。
「え~、私いてもいなくてもあんまり変わらない気がするなぁ」


遠まわしにご遠慮する私。
面と向かってお断りするなんて、なんだか自意識過剰で警戒心マックスみたいだ。

荒神さんが何の気なしに誘っているのはわかる。
でも、私は異性のひとり住まいに行くのは無用心な気がしちゃうんだよう!
私、隙がありますよ~って言ってるみたいじゃない。


「高級ホテルでディナー!もういっそ、豪華客船ディナークルーズでもいいぞ!」


荒神さんが迫る。
付き合う約束は確かに約束したけど……休日に彼の家でってのも含まれるの?


「乗りかかった船だろ?」


作戦がうまくいきそうもないこの場合、沈みかかった船っぽい。

私はラーメンのどんぶりに箸を置いて、渋々答えた。


「わかりましたよ、協力します」


「よーし、いい子だぞ、日冴ちゃん」


荒神さんが気をよくして、私の頭を撫でてくる。
私はその手を払い落として言った。


「名前呼びしない!ナデナデしない!」


気安いんだってば、モテ男の接触は!



その後のレイトショー、荒神さんはまたたっぷり泣いていた。







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