秘密が始まっちゃいました。
私は自分のお昼用のサンドウィッチをひとつもらい、コーヒーを飲みながら彼のブランチを見守った。


「これ、旨いな。カレー入ったやつ」


「サラダとか飲み物も買ってくればよかったですね」


「おかまいなくー」


荒神さんは買ってきたパンをすごい勢いで食べてしまう。多めに買ってきたつもりだけど、ホントお腹空いてたのね。

「うちに何もない」と言っていた。彼は自炊はしないのかも。
ちらっとキッチンに目をやると、電気ポットとコーヒーメーカーがあるばかりで、鍋やフライパンは見えるところに出ていなかった。


「ふー、ひとまず満たされた。よし、見るか」


荒神さんはパンの包装をキッチンに捨ててくると、自らのコーヒーを注ぎ直し、レンタルしてきたDVDを私の前に置いた。


「『グリーンリーフ』『7月の恋人』『心の旅』。まー、見事に泣けるのばっか選びましたね」
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